用語集

リチウムイオン二次電池に関する専門的な用語について解説します。

あ行

  • EIS

    Electrochemical Impedance Spectroscopy(電気化学的インピーダンススペクトロスコピー)の略。電極に交流電気信号を入力したときの応答を調べ、電極反応を解析する方法。

  • in-situ

    「その場で」の意で、動的状態の試料を測定する際に、in-situ測定と表現される。電池分野では、昇温合成過程での測定や、充放電動作中の測定などで用いられる。例:in-situ Raman測定、in-situ XRD測定、など。

  • SEI

    Solid Electrolyte Interfaceの略。主に黒鉛負極表面で電解液の溶媒や添加剤などが分解し、その反応により生成した表面被膜のことを指す。

  • LNMO

    Li[Ni0.5Mn1.5]O4のことで、LiMn2O4のマンガンの一部をニッケルに置換した正極材料。充放電時におけるニッケルの2~4価の電荷変化により、約4.7Vに電位平坦部が生じ高電圧であることから電池の直列本数が減るなどの利点があって注目され、電解液組成や添加元素等の研究がなされている。

  • SiO

    一酸化ケイ素のことで工業的にはガスバリアフィルム用の蒸着材料として使用されている。固体のSiOは1907年にH. N. Potterにより報告されて以来100年に亘り構造が議論され、近年はSiOxマトリクス中にナノサイズのSiドメイン(またはSiクラスター)が高分散した状態とする報告が主流だが単相であるとする報告もある。SiOガスを急冷することで得られ、室温では純安定相であって900℃程度に加熱すると2SiO→Si+SiO2の不均化反応が起こる。LIB用負極材料としては1997年に日本で1200mAh/g程度の可逆容量が初めて報告されてから多くの研究がなされ一部は実用化されている。初期不可逆容量とLi吸蔵放出に伴う膨張収縮が課題とされる。SiO-CはSiO粒子表面がカーボンコートされたものである。

  • ARC

    Accelerating Rate Calorimeter(断熱型反応熱量計)の略。電池や電池材料を一定温度で昇温加熱し、加熱に伴う自己発熱の温度や発熱量から電池構成材料間の反応性を評価する。

  • N/P比

    正極(P)と負極(N)の対向する面積あたりの容量比。リチウムイオン電池では負極でのLi金属の析出を防ぐため、負極の容量を正極の容量より大きくする(N/P比>1とすることが多い。また、正極と負極を重ねて電極積層体や捲回体を作製し、リチウムイオン電池を試作する際、正極が負極よりはみ出さないように、負極の電極面積は正極の電極面積より大きくすることも多くある。

  • SOC

    State of Chargeの略。電池容量に対する充電の割合を百分率で示した値。例えば充電が完了された状態はSOC100%となる。充電の程度で変化する特性を議論するときにはSOCを用いることが多く、リチウムイオン電池ではSOCを使うことが多い。

  • SOH

    State of Healthの略で電池の劣化状態を示す値。劣化度を容量で表現する場合は、劣化時の電池容量/初期の電池容量となる。ある電池では劣化時の5時間率での満充電容量と初期の満充電容量の比などと定義され、また内部抵抗変化も含めて把握する方法もある。劣化度の把握は車載用電池の信頼性確保のために重要であり、電池の種々の特性評価から電池の劣化度合いと寿命を予測する手法が研究されている。

  • On-line GC、GC/MS、
    On-line Electrochemical GC

    GC=gas chromatograph。MS=Mass spectrometer。Online GCではサンプル採取ガス配管を直接GCに繋げてガス組成分析を行う。GC/MSではGCによる分離組成を質量分析装置により分析する。On-line Electrochemical GCでは電池にガス配管を繋ぎ充放電中に電池から出るガスを直接採取して組成分析を行う。

か行

  • 曲路率

    構造体の厚み:ℓ(=表から裏への最短距離で、セパレータでは膜厚)と構造体内部の空隙を通って表から裏へ達する貫通している貫通孔の距離:L(=流路長)の比率:L/ℓを曲路率、または、屈曲度ともいう。電極やセパレータ内部の空隙構造を議論する際に用いられ、電解液中のLiイオンがどの程度遠回りするのかという指標となる。

さ行

  • SAICAS(R)
    (DAYPLA WINTES CO.,LTD製品)

    Surface And Interfacial Cutting Analysis System(表面・界面切削装置)。電極の合剤層をブレードで食い込んだ後水平に削り、その際に発生する水平可重値、垂直荷重値、変位量の3パラメータを解析することで剥離強度やみなしせん断強度の測定を行う。

  • GITT

    Galvanostatic Intermittent Titration Techniqueの略。電気化学的測定手法の一種で、電流を制御し、電圧の過渡応答を解析する。例えば、一定電気量で放電または充電を繰り返しながら、各組成での拡散係数を測定する。

  • 寿命(サイクル寿命)

    充放電サイクルにより電池の初期容量が徐々に低下する。初期容量から所定の容量(初期容量の80%等)に低下するまでの充放電サイクル数または期間をいう。また、出力が重要な用途では、所定の出力に低下するまでのサイクル数(期間)をいう。

  • スラリー

    液体と固体粒子の懸濁液をスラリーと呼び、活物質や導電材の固体粒子およびバインダー等を有機溶剤や水と混合してスラリーを作製し、金属箔上に塗布してシート状の電極を作製することが多い。

  • 接触抵抗

    リチウムイオン電池では、活物質などの電極を構成する粒子間の抵抗や集電体と粒子界面の抵抗のことを言う。活物質粉末にバインダーや電子伝導助剤を少量混合したコンポジット電極をリチウムイオン電池の正極や負極に用いており、接触抵抗が電池特性に大きな影響を与える。

た行

  • 単一粒子測定

    活物質の1粒子のみを対象とする電気化学測定。活物質自体の電池特性や交流インピ―ダンス、DC-IR、サイクリックボルタンメトリー等を評価できる。

  • 対称セル

    正極と正極および負極と負極を組み合わせ、正極と負極の劣化を個々に解析するための電池。具体的には、電池特性評価後の電池を解体して対称セルを作製し、評価前の電池電極から作製した対称セルの交流インピーダンスと比較することで正負極の劣化の程度を正極と負極に分離できる。

  • TML、伝送線モデル

    Transmission Line Model: TMLの訳で、インピーダンス解析の際に用いる等価回路モデルのひとつ。電極が活物質と導電助剤と細孔からなる構造としたとき、細孔内の深さ方向の電流密度分布を細孔内のイオン抵抗と見做し、溶液抵抗と界面インピーダンスを深さ方向にいくつかに分割したモデル。電解液や電極界面を抵抗やコンデンサー成分を用いて多段の梯子型の等価回路で表し、この等価回路の形状から伝送線モデルと呼ばれている。また、イオンブロッキングセルを用いてACインピーダンス測定を実施し、イオン電導と電子電導の並列伝送線モデル等価回路を適用して解析した例もある(参考:第56回電池討論会2F04(2015年))。

  • 転動流動層

    気流による粉粒体流動で形成される層のことで、その原理を利用したコーティング装置がある。リチウムイオン電池材料では、正極活物質表面に微粒子をコーティングし、性能を向上させる事例がある。

  • DC-IRまたはDC-R

    直流抵抗。電池に直流電流を印加し、電圧の変化から求めた抵抗。値の異なる電流を数秒印加し、電流-電圧の関係から求める方法もある。

  • 電荷移動抵抗

    電極/電解液界面での電荷移動による抵抗。リチウムイオン電池ではNyquist plotにおける円弧(半円)から評価することが多い。

  • dT/dQ

    LIBTECでは、電気容量(Q)に対する厚み(T)の微分をdT/dQと呼んでいる。また、温度の微分を指す場合にもdT/dQと表記される。リチウムイオン電池は正負極中の活物質によるリチウムイオンの吸蔵放出により充放電する。この吸蔵放出に伴い活物質材料の結晶格子体積が変化し、それが活物質粒子の体積や電極の厚み(T)の膨張収縮を生じさせる。LIBTECでは、電極単体または電池の総厚の変化を充放電状態下で高精度に測定する技術を開発し、厚み変化(dT/dQ)から種々の活物質の相転移を捉えることに成功した(参考:第56回電池討論会3M21(2015年))。

  • dV/dQ

    充電または放電容量(Q)に対する電圧(V)の変化量。dU/dQ、dE/dQと表記されることもある。電池の充放電試験では電圧と容量の関係(充放電曲線)が得られ、電圧(V)を容量(Q)で微分(⊿V/⊿Q)することでdV/dQ曲線が得られる。例えば、黒鉛-リチウム化合物(LixC6)ではLi含有量の変化に伴う相転移で電圧変化が生じ、それがdV/dQ曲線のピークとして観測される。ピーク形状やシフト量、ピーク間距離などから電極内の反応分布や劣化に関する情報が得られる。dV/dQの分母と分子を逆にしたdQ/dVは非常に遅い掃引速度でのサイクリックボルタモグラム(CV)にほぼ相当することが知られており、新規活物質のプラトー電位の解析などに利用される。

  • DSC

    Differential Scanning Calorimetry (示差走査熱量分析)。一定温度(※一定速度でない場合もある)で昇降温し試料の温度に伴う吸発熱量(カロリー)を測定する分析装置。例えば、充電して一部Liを引き抜いたLixCoO2正極材の熱分解反応などの解析に用いる。

  • DOD

    Depth of Dischargeの略。電池容量に対する放電深度を百分率で示した値。

  • ドライルーム

    湿度を低く保った部屋。リチウムイオン電池の作製工程で材料が吸湿するのを防ぐために用いる。湿度は露点‐30℃等と露点での表示が多い。

な行

  • 難燃性電解液

    通常より燃えにくい電解液。引火点が高いもしくは不燃性の電解液。

  • 213固溶体系

    Li過剰型Li2MnO3-LiMO2固溶体のことで高容量正極材料として盛んに研究されている。

  • Newmanモデル

    電気化学反応とイオン種の輸送方程式を組み合わせて電池の充放電を数学的モデル化したもので充放電のシュミレーションが可能となる。J.Newman教授らが提唱した当初は1次元モデルであったが、近年コンピューターの性能向上により、2次元や3次元のシミュレーションも行われるようになった。

  • 熱暴走

    発熱反応により温度上昇が制御できない状態に至ること。電池をある温度以上に加熱した際に、場合によっては充電された正極材料と電解液の発熱反応で温度が上昇し続け制御できない状態となることがある。例えば充電した試作電池を200℃以上に加熱するといった場合に生じることがある現象。

は行

  • バイポーラ電池

    通常のリチウムイオン電池では、集電体の表裏が同一極のモノポーラ構造となる電極を採用しているのに対して、集電体の表と裏で正負の異なる2種類の電極構造を用いた電池。一つの電池の内部に複数の電池素子が直列に積層された構造をとり、積層数を変化させることで単セルの電圧を任意に設計することができる。

  • PITT

    Potentiostatic intermittent titration techniqueの略。電気化学的測定手法の一種で、電圧を制御し、電流の過渡応答を解析する。

  • BVS

    Bond Valence Sumの略で単位胞内の任意の位置における結合原子価の総和のこと。結合距離からイオンの価数を割り出したり、Li+やNa+などの電荷担体の伝導経路の推定に利用される。計算コストが低い(PCで可能)、様々なイオン種に適用が可能などの特徴があり、3Dマッピングしたものを結晶格子と合成して描画するなど、応用が広がっている。

ら行

  • レオメーター

    材料の動的粘弾性を測定する装置。リチウムイオン電池の電極作製では電極スラリーを用いることが多く、そのスラリーの流動性の工程管理や、分散性や凝集性などの混合状態を分析するために用いられる。

  • 露点

    水分が冷却により結露する温度。空気中の湿度を表す値。露点‐30℃は空気中の水分濃度が230ppmであり21℃における相対湿度1.5%に相当。また、露点‐50℃は水分濃度24ppmで0.2%の相対湿度に相当する。